研究者の独り言 

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しかし、学会の時はしっかりと宿泊施設を案内されていますね?

 
 
 
ジャンル別に分けてみました。いろいろと選べます。

 

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 私の研究や、実験、そして受けた講義で思った事や、感じた事を書いていきたいと思います。 

 1:カルマン渦
karuman.gif
 毎年、冬の季節になると私は楽しみにしている事があります。
 テレビなど殆ど見ない私が、この時期は天気予報の時だけ必死になってテレビ画面を食い入るように見詰めています。

 さて、この記事の本題に入りたいと思います。 
 それは、地球上最大の気象現象が、この韓国の済州島周辺、特に南東方向付近に起きるのです。
 それはカルマン渦列です。
 毎年の暮れから翌年の三月末頃まで、良く観測されるのですが、今回は見落としていたのか、一回も見ることが出来なくって、残念に思っているのです。

 カルマン渦は物理学、特に流体力学の世界で有名な物理現象で、工学の世界では気体や液体の流速の計測などに使われて居ますし、その研究が行われています。

 私も一時期、そのカルマン渦の研究を致しておりました。


カルマン渦とは:
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の引用です。

 カルマン渦(カルマンうず)またはカルマン渦列(カルマンうずれつ)は、流れのなかに障害物を置いたとき、または流体中で固体を動かしたときにその後方に交互にできる渦の列のことをいう。ハンガリー人の流体力学者セオドア・フォン・カルマンに因んでいる。

流量計への応用 :
 発生する渦の数が流速(流量)に比例するので、この原理を用いた流量計が工業分野で用いられている。自動車のエンジンを電子制御する際に、吸入空気量を常に測定する必要があるが、流路に障害物を置きその後ろに発生するカルマン渦の数を超音波で計測する方式が日本車へ採用された事例がある。

気象現象におけるカルマン渦 :
 冬季の済州島(チェジュ島、韓国)や屋久島など、島の風下側に雲渦が列状に並びカルマン渦を形成することがある。この雲渦は主に下層の層積雲で構成される。高さ1km付近に顕著な気温逆転層があり、山頂がその上端よりも高く、風向がほぼ一定で比較的強い風が吹くなどの一定の条件がそろうと発生することがある。雲渦ができる高度は500m〜2,000m程度、長さはおよそ500km〜1,000km、渦の直径は20km〜40kmとなることが多い。

タコマ橋崩壊との関連:
 アメリカ合衆国で起きたタコマナローズ橋崩壊事故の原因はカルマン渦の発生メカニズムと同一である。横風の中、剥離の発生しやすいH型断面の橋梁に、カルマン渦を生じるような不安定な剥離が起こり上下に橋が振動、共振し崩壊に至った。この事故後に建設された橋では剥離を抑えるよう流線型に近い断面形状を採用するなどの対策がなされた。余談だが、この事故の調査委員会にはカルマン自らも参加していた。

 以上の様に工学系の学会では、機械工学や建築学会でも、ビルや橋梁などの崩壊予防や震動防止のために、カルマン渦が研究されています。

 雨が降っている時などのドライブ時に、トラックなどの後ろを走っている時に、巻き上げられた水滴の動きを注視してみて下さい。
 その水滴が、さもトラックが尻尾を振っているように左右に、揺れているように見える筈です。

 トラックの後方でも、カルマン渦が発生している訳です。
 それから、風の強い時に高圧電線がブーンと云う音を出していますが、カルマン渦が高圧電線付近に発生することで電線が揺らされて、その振動音がしているのです。

 このようにあらゆる所でカルマン渦は発生しています。勿論、小川の中に生えている芦の水流の下流にもです。

閑話休題

 韓国の済州島は、その島の周辺に起きる現象や島自体の特徴から、先程、申し上げましたように物理系の国際学会などがあるので、なかなか興味深い島だと思っています。

 歴史的に見ると、15世紀初めごろまでは耽羅(たんら)という王国がありました。韓国本土と済州島の関係は、我が国と琉球王国(沖縄県)に良く似た関係で、興味深く思っています。

 何よりも、火山島で島の至るところに噴火口が口を開いています。なかでも、城山日出峰と云う噴火口跡から成る岬が必見です。火山学上はタフコーン(火山灰丘)に分類されます。

 皆様も機会がありましたら、是非、済州島を訪れて見て下さい。海鮮食材の美味しい所です。それに、今なら、円が強いので安価な感覚を味わえます。

 



 2:ふと思い付いた事
karuman.gif
 先程、カルマン渦(カルマン渦列)の事を書きましたが、それに関して。

 嫁ハンが先日、用事があって愛媛県の松山まで行って来たのですが、帰りの高速で強風のために自分の車が横転するかと思ったそうです。
 その話を思い出して、カルマン渦の記事のことについてもう一度考えてみました。

 それは、私の記事の中でも触れました様に、トラックの後方に発生するカルマン渦の発生による車体の揺れに対する影響と、仮に影響があるとしたら、その対策をどのようにされているかを知りたいのです。

 私はそのシミュレーションをした訳でもなく、計算もしておりませんが、トラックの方形の筐体はカルマン渦を発生しやすいと思いますし、仮にその筐体の固有振動数と、カルマン渦発生による振動とが共振した時に、大きな揺れが車体に加わるので無いかと考えております。
 最悪の場合、ハンドルが取られるとか、車体の転倒が起きるのでは無いかと考えております。

 以上の様な疑問と好奇心が生じました。

 



 3:大昔に講義で習った事
ナイフエッジ現象の話

 遥か昔の頃に、無線工学の電波伝搬理論を教えられたときの講義の一部からです。

 これは、理論とか法則の講義では無くて、実際に起きていた現象の話です。

 まだ、テレビ放送がVHF(超短波)だけの頃、日本放送協会(NHK)が全国レベルでの中継網が整備されていなかった頃の話です。

 それは、富山県の或る田んぼの真ん中に、NHK名古屋放送局の電波が強い電界強度で到達している事が判ったのです。すぐさま、NHK富山放送局の技術者たちがその原因を調べました。

 その結果は、日本アルプスのどれかの峰でナイフエッジ現象が起きている事が判ったのです。そこでNHK富山放送局は、その田んぼの所有者と交渉して受信施設を設けて、自局の中継回線として使ったそうです。

 私は、実際に現場に行った訳でも、その現場の写真などを見た訳でないので、講義で教えられたままをここに書き込んでいます。

 このような回折現象を「山岳回折」と云い、今回の話の様に山越えで通信が可能になる事が起きます。
 山がない場合に比べて電界強度が強くなる割合を、山岳回折利得と云います。
 厳密には山はナイフエッジではありませんが、山頂が波長に比べて狭ければ回折の効率が良く、このような現象が起きます。
 それでは山頂部分がお椀を伏せたような丸い形では?
 その要因では回折が起きにくいのです。
 つまり、その山頂が槍のように鋭くなっていると、このときに起きる回折波が強くなります。

 送信点からも受信点からも、その山頂が見通せる場合(これを見通し距離と云います)、送信点−山頂−受信点の間の経路は、ほとんど自由空間伝搬とみなせます。
 正確には大地反射波も考慮に入れる必要がありますが、これは或る程度無視できるものと考えています。

 また、地球は丸いので、途中に障害物がなくても、その丸みで送信点から受信点を見通せない場合があります。このような場合、地球の丸みで回折が起こり、通信できることがありますが、空気の屈折率の揺らぎなどによって大きく電界強度が変化します。

 ところが、途中に山があると、山岳回折が使えて、これは自由空間伝搬と見なせる2区間の経路ですので、安定して(フェージングの少ない)通信が可能になります。

 



 4:EME通信
Earth-Moon-Earth(EME)(アースムーンアース)対月面反射通信(EME通信)
 地球上の離れた無線局同士が、お互いに指向性アンテナを、地球から往復約75万キロメートル離れた月面に対して向けて電波を送信し、その反射波を受信する事に依って、通信回線を樹立し通信する方法です。
 
多段の並列に組み合わせた指向性アンテナや大出力の無線機、そして月の公転軌道を追尾出来るアンテナ指向装置などが必要で、多額の経費と無線工学だけでなく、天文学の軌道計算も出来る必要があって、なかなか興味が尽きない通信方法です。

 私は今まで、山岳反射通信しかした事がありませんので、上記の通信手段に興味が有りました。
 山岳通信は、反射面が動かない山体ですので、その方向にさえ指向性アンテナを向ければ、見通し距離以上の通信が出来る事が有ります。
 ローテーターさえ有れば、ある意味で簡単な通信手段です。

 しかし、前述の様に月は地球の周りを公転している訳で、時間と共に空間座標が変化していきます。
 その為に、水平角だけでなく、仰角も制御出来るローテーターが必要になり、月の公転に合わせて追尾出来る制御装置が必要です。

 この様に、単に新たな通信手段を手に入れようとすると、専門分野以外の知識が必要となり、その知見を習得しなければなりません。

 しかし、いつかはやってみたい通信手段だと思っています。歴史的に見ると、今まで多くの実験がなされて、そのデータを見れば直ぐにでも実現出来るのですが、やはり白紙の状態から試行錯誤して実現するのが面白いと思っています。
 


 5:反射通信について
 EME通信(月面反射通信)に触れましたが、そう言えば、数年前に無線Lanの実験で反射通信を試した事が有ったのを思い出しました。

 それは広大な敷地に在る巨大なプラント内で、制御信号や各種データの伝送実験をしている時に、無線Lanもその実験に含めていたのです。勿論の事、微弱な家庭用無線Lanの機器では通信不可能ですので、業務用の機器を新たに購入し、実験に使用しました。

 プラント内での実験ですので、本来の直接波だけでなく、反射波まで受信してしまいます。
 また伝送経路の途中に大きな設備が在る場合は、中継設備を設けなければなりません。
 無線Lanに使っている電波の周波数が高いので、その伝搬特性は光に近く、物の陰になった部分には信号波が到達しないのです。

 そこで、幾つもの中継設備を設置するのも予算的に不可能だったので、私はふと周りを見回しました。
 すると、他の企業の大きな金属製の円筒状の構造物が在るではないですか。
 そこで、私は利得の高い指向性アンテナをその金属製の円筒状の構造物の方向に向けて、受信点の受信装置も指向性アンテナに変更し、その金属製の円筒状の構造物にアンテナを向けて実験しました。

 想像通りの電界強度の強い信号波を受信出来る事が実証出来ました。

 しかし、これは敷地外に信号波を送信し、その反射波を受信するので、現場の人間が難色を示したのです。
 そこで敷地内の他の適当な構造物を探す事になりました。

 この様に、反射波を上手く使う事によって、中継設備を少なくする事、また反射できるような構造物が無い場合は反射板を適当な箇所に設置する事で、同様な効果が得られます。

 通常の通信では嫌われている反射波ですが、この様に有効な使い方が出来るのが、面白いと思っています。
 


 6:スポラディックE層反射通信の楽しみ

 今日のように快晴の日には、気になる現象が起きる時期になってきています。

 それは電波の異常伝搬、通常では届かない地球上の地域に、電波が到達する事です。

 私の説明では、信憑性を疑われる方もいらっしゃるかも知れませんので、下記をご覧下さい。

スポラディックE層とは:
出典: フリー百科事典『ウィキペディア』

 スポラディックE層(Es層、略称EスポまたはEs、英語:Sporadic E layEr)とは、春から夏ごろにかけて、主に昼間に、上空約100km付近に局地的に突発的(sporadic)に発生する電離層である。通称「Eスポ」と呼ばれる。
 Esの電子密度が極度に高い場合は、F層でも反射できないVHF帯の電波をも反射するという特殊な性質がある。

発生時の状況
 30MHz以上の周波数の電波は、VHF(VERY High Frequency)と呼ばれ、通常は電離層を透過し、見通し距離外への伝播はできず直接波通信に限定される。 ところが、スポラディックE層と呼ばれる特殊な電離層が発生すると、通常は電離層を透過する30ー150MHzのVHF電波が、スポラディックE層により反射されて地上に戻って来るようになる。このため、日本では韓国や中国などの周辺諸国や離島・地方の大出力局のテレビやFMラジオ電波が、スポラディックE層で反射して、日本でも強く受信され、テレビの1〜3チャンネルやFMラジオ放送に混信による画像や音声の乱れが生じることがある。アマチュア無線では21MHz帯以上の周波数の反射が顕著で、長距離(300〜1500km以上)の交信が可能となる。ただし、21MHz以下の周波数でもスポラディックE層による反射は起こっている。

発生の傾向
 Eスポは、季節的には5月中旬〜8月上旬に発生頻度が高い。時間的には、11時〜12時と17時〜18時頃に最も出現頻度が高い。また数日続けて同じ時刻近辺にEスポが出現しやすい傾向があるが、発生頻度は不規則である。
 Eスポの発生頻度に地域的偏りがあり、その原因は不明であるが、地球上では日本付近において最も出現率が高いことが知られている。通常の電離層(D,E,F層)と比べると、電子密度が極めて高いのがスポラディックE層の特徴で、上空約100kmで雲のような状態で分布し、高速で移動する。
 夜間に発生するVHF帯での異常伝播は、E層での「FAI」と呼ばれる電離層構造が出来るという説もある。FAIとは、Es層内プラズマ中の不安定な構造が、地磁気の磁力線に沿った鉛直方向に対して電子密度が高くなる濃淡構造言う。FAIは磁力線に直行の方向から入射する電波を強く後方散乱し、夏の夜半前にしばしば現れると言われている。
 電離層(D,E,F層))の電子密度の変化は、11年周期の太陽活動との相関が高いことが知られているが、スポラディックE層では、出現頻度や最大電子密度と太陽活動との関係は無い。流星を起源とする金属イオンによって高い電子密度が保たれるため流星群の出現と相関があるとする説や、ある特定の気圧配置において出現しやすいとする説もあったが、現在では、ウィンドシアー理論によるスポラディックE層の生成過程説が有力的に支持されている。

 以上のように、スポラディックE層反射通信は、突発的に起きるもので、予測が付かないのがとても面白いと思います。
 常に、想定周波数帯域をワッチ(受信)し、その兆候が起きた時に観測を始めたり、通信実験を試みたりと、突然忙しくなるのです。
 かと言って、常に起きるものでもなく、その発生条件は上記の様にウィンドシアー理論に依って定義されてきています。
 それでも、予測不能な現象で在る事に代わりは無く、地球物理学的な電気現象がいつ起きるかと思うと興奮する時も有ります。

 今、窓から見える青空を見ていると、その様な事を思い出しました。

 この様に対流圏以外にも、電離層で色んな現象が起きていますが、興味が尽きないと思いますが、皆様は如何でしょうか?

 例えば、電離層での有名な現象に「オーロラ」が在りますが、表現の仕方が悪いとは思いますが、その現象は電離層で、テレビのブラウン管の中で起きている蛍光反応が、地球上の遙か上空で起こっていると考えて下さったら良いと思います。

 あの様な綺麗な物理現象に、電気物理学から考察したら、決して綺麗には見えませんが、人間の目には美しい現象だと思います。

 



 7:私の研究の案件;視覚障害者の視覚補助機器について

 今朝の毎日新聞の電子版でこの様な記事が在りました。

 抜粋を掲載致します。

”視覚障害者:駅での死傷事故35件、転落など…15年間で

 視覚障害者が駅ホームから転落したり、電車に接触して死傷した事故が94年から現在までの15年間で、全国で少なくとも35件発生していたことが、「東京視覚障害者協会」(栗山健会長)の調査で分かった。うち死亡事故は18件。全盲の人が“欄干のない橋”に例える駅ホームの危険性が浮き彫りになった。

 死亡事故の内訳は、転落16件、電車接触2件。乗車しようとして車両連結部から転落▽進入の電車に近づき過ぎて側面部に衝突−−などだ。

 調査担当の同会運営委員で弱視の山城完治さん(52)は「視覚障害者は、落ちる・ぶつかる・つまずく・迷うという苦労をしながら歩いている。命を守ることを第一にした駅にしてほしい」と話す。”

 私の福祉機器研究の一つの案件が、「視覚障害者の視覚補助機器」なのですが、旧帝国大学の大学院教授からも評価されたその手法技術を用いれば、この様な事が防げる筈です。

 私の研究中のその機器は、私の考えでは、視覚障害者に物がはっきりと認識は出来ないですが、その対象物のおぼろげな形状や位置、その存在と自分との距離感、その対象物の移動が、視覚障害者に認識して貰える機器です。

 実験と開発で、その解像度が上げられれば、色は判別出来ませんが、視覚で見て居るように判別が出来るようになるのではと考えています。

 勿論、アメリカで研究中の視覚補助機器の様に、脳に電極を打ち込むような事も必要の無い機器です。人体には何も施術する事が無いので是非とも実現したいと頑張っています。

 研究に使えるお金を使い果たした今、研究がストップしているのが、とても歯痒く感じています。

 盲導犬を必要とする視覚障害者の方々に、必要な数の盲導犬が行き渡る事が出来ない現状では、この様な機器の開発が必要なのでは無いのでしょうか?

 このような機器には、その性能に限界が在りますが、やはり、犬の能力を利用した盲導犬に対して、研究者としてそれに変わり得る機器を発明したいものだと思っています。

 




 8:私の研究のライフテーマの一つ(ネウマ譜の研究)
s-usualis01.jpg この写真は「リーベル・ウズアリス ミサ・エッツ・オフィッシ プロ・ドミニシス・エッツ・フェスティス(聖餐式と聖務日課 日曜と祝日のための全てに使える本)」と云う楽譜の本の最初のページです。

 以前、少し触れた事があると思いますが、私の生涯の研究テーマの一つが、このネウマ譜の解読です。最近は他の研究に忙しくて、全くしていないのが現状ですが、今日は気分転換の為に、楽譜を開いていました。

 それで、皆様にはご興味も無いと思いますが、昔のヨーロッパの楽譜は、この様な楽譜が在ったのだと知って戴きたく、紹介させて戴きます。

 この楽譜に関しては一応、これだろうと云う歌唱法は確立されているのですが、本当に間違いが無いのかと云われたら、研究者達は絶対に間違っていないとは言えないのです。

 この楽譜はバロック期に使われなくなり、その後にクラッシクのメンデルスゾーンが彼の作品で、そのネウマ譜で書かれた旋律を、通奏低音のパートで、使っていてくれた事から、この楽譜の解読がある程度進んだ経緯が在ります。

 所謂、モノフォニー(単音律旋階)からポリフォニー(複音律旋階)への西洋音楽の発展の中で消えていった楽譜なので、現在その解読が、ドイツとフランスの二カ所での研究が続けられています。
 私も、微力ながらその研究の手助けがしたく、高校生の頃に、この写真の楽譜を手に入れて、研究を進めています。一番下に1951と在りますが、1951年に印刷された楽譜です。一冊の本で、その厚さが6cm程在りますし、年数が経っていますので、本もボロボロになってきています。何分私より先に世に出た楽譜ですので・・・・劣化して当然なのかも知れません。
 書かれている言語はラテン語で、ラテン語は三種類在ります。その一つは教会ラテン語、貴族ラテン語、民衆ラテン語の三種類在りまして、それぞれが微妙に、また在る部分では絶対的に違っている箇所もあります。因みにこの本は教会ラテン語で書かれています。貴族ラテン語は、学名などに現在使われるだけで、単語のみの使用となっております。イタリア語が民衆ラテン語から出来たのですが、この教会ラテン語からイタリア語を見ると、全然違った言語に見えます。
 まずは導入部分(イントロイトス)から・・・。
 この次は、五線譜とこのネウマ譜(四線譜)の対象による説明文を見て戴きたいと思います。
 




s-usualis02.jpg 大分前に、このネウマ譜の発展の過程を、例示もせずに紹介した事が有りました。考えてみれば無茶苦茶な説明を致したものだと反省を致しております。

 写真(コピー)の上から三分の一の部分に音符の種類が掲載されています。
 ネウマ譜の単体(単音ネウマ)で名称と種類が述べられています。
 a.方形の形ですが、これをPunctum quadratum(プンクツム クアドラツム)と呼びます。
 b.縦菱形の形ですが。これをPunctum inclinatum(プンクツム インクリナツム)と呼びます。
 c.湾曲した方形に右下に尻尾が付いているような形ですが、これをVirga(ビルガ)と呼びます。
 d.これは、言葉で表現しにくい形ですが、同じ名前で三種類の形ですが、全て同一の音符です。左側が魔法のランプの炎の形、真ん中が横長の方形のひずんだ形、右側がビルガの尻尾を取った形で、これらをApostropha(アポストロファ)と呼んでいます。
 e.これも三種類の形の音符ですが、全て同じ音符として扱います。これは、左から左傾斜の菱形、真ん中が横長の方形、右端が少し膨らんだ方形、これらをOriscus(オリスクス)と呼んでいます。
 f.これは、右傾斜の菱形ですが、Qulisuma(クイリスマ)と呼んでいます。
 そしてこの音符は全て8分音符で五線譜の音符のような種類は有りません。

 写真(コピー)の中央には、ネウマ譜が二つ連結された(二音ネウマ)場合の名称と種類が述べられています。
 左側の様な形式が、Pes seu Podatus(ペス セゥ ポダツス)と呼びます。楽譜の一番左上に張り付いて居るように見えるのが、五線譜のト音記号に相当する記号でC音記号、その記号が挟んでいる線がドになる事を示しています。ですからこのネウマ譜を五線譜に解釈すれば、ファ、ソになる訳です。
 右側の様な形式は、Clivis(クリビス)と呼びます。先程と同じ階調なので、五線譜に解釈すれば、ラ、ソになる訳です。

 その下の三連の音符(三音ネウマ)の名称と種類は;
 左上から下へ簡単に説明します。
 左上が、Porrectus(ポーレクツス)で、ド、ラ、シを表現しています。
 その次が、Scandicus(スカンディクス)で、ミ、ファ、ラを表現しています。
 左の一番下が、Salicus(サリクス)で、同じく、ミ、ファ、ラを表現しています。
 右上に付いての説明;
 右上が、Torculus(トルクルス)で、ソ、ラ、ソになる訳です。
 右下は、Climacus(クリマクス)で、ラ、ソ、ファになります。

 次に、四連の音符(四音ネウマ)ですが、ここまでで大体の事が理解して頂けたと思います。
 左上から、Porrectus flexus(ポーレクツス フレクス)
 左下が、Pes subbi-punctis(ペス スッビ プンクティス)
 右上が、Torculus resupinus(トルクルス レスピヌス)

 以上が、このページの簡単な説明になります。

 この様に、ネウマ譜は五線譜に変換は出来るのですが、ニュアンスが正確に表現出来ず、やはりモノフォニー音楽を歌う時などは、ネウマ譜の方が歌う易いと思います。 

 

 皆様はネウマ譜についてご存知ですか?

 音楽大学などで西洋音楽史を履修なさった方はご存知だと思いますが、念のために説明をさせて頂きます。

 現在使われている五線譜以前の楽譜で、ネウマと云う音楽記号を使った四線の楽譜のことです。

 勿論、最初は一線譜が始まりで、その一本の線の上と下に必要に応じて、付線を行ってメロディを記譜してました。

 使用する音域が広がるにつれて、一本の線が二本、三本そして最終的に四本の線で構成された楽譜として完成されました。

 しかし、ネウマの記号の特殊性もあって、モノフォニー(単音律旋階)は効率よく記譜出来、演奏もしやすい楽譜なのですが、中世ルネッサンス期から発展してきたポリフォニー(複音律旋階)の記譜は不可能な楽譜です。

 それでもバロック期までは使われてきましたが、高度に発達した対位法や和声法の記譜には限界が来て、ついに五線譜が発明されて、四線譜は次第に使われなくなった経緯があります。

 最初の対位法は、ネウマの旋律に4度か5度の音階を付け加えた平行旋律が最初だと考えられています。

 この唱法をオルガヌムと呼びます。歴史的に見ると「Dominica Resurrectionis ad Missam」の続唱「Victimae paschali laudes」が最初の対位法によるポリフォニーでないかと云う説もあります。

 さて、ポリフォニーはそちら専門の方に任せて、私はモノフォニーのネウマ譜に限ってお話を進めていきたいと思います。

 とりあえず、youtubeでこのネウマ譜がどのような楽譜で、どのように歌われているかをお聴き下さい。
s-VIII Kyrie.jpg

Kyrie Eleison VIII (Angelis)

 このデータはネウマ譜と歌唱とがリアルタイムで映っていますので、判り易いと思います。
 この曲は「第8キリエ」と言って、「天使ミサ」に使われているギリシャ語の曲です。

 まだヨーロッパに現在のようなハーモニーを持った楽曲が出来る前は、このような歌が歌われておりました。その様子を思い浮かべながらお聴き下さい。

 左の楽譜が私のネウマ譜です。

 前回少し取り上げた曲で、ネウマ譜で書かれた「Victimae Paschali Laudes(ビクティメ パスカリ ラウデス:見よ神の子羊」を、youtubeで無いと思いながら検索してみました。

 すると幾らでもあったのです。

 以下にyoutubeで見付けたVictimae Paschali Laudesのリンクを示します。どうぞお聞き下さい。

s-Victimae.jpgVictimae Paschali Laudes
 この歌唱法は、物凄く癖のある歌い方です。私のネウマ譜の解釈と大分違った歌い方です。
 しかし、楽譜が写っていますので、先ずこの歌の感じを判って戴きたいと思います。

Victimae Paschali Laudes
 この歌い方が私の歌い方です。以前にも説明致しておりますが、正確な歌唱法はまだ確定していません。

Victimae Paschali Laudes
 本来はこの様に、パイプオルガン等の楽器の伴奏もなく、人の声のみの歌唱が実際の歌い方です。私のラテン語が訛っているのか、この人が訛ったラテン語なのか・・・・・疑問です。

 一説によると、このVictimae Paschali Laudesがルネッサンス期に最初のポリフォニー(複音律旋階)として、通奏低音のパートで使われたと云われています。またこの曲の原型は原始的なシャンソンからのメロディで無いかとも云われています。

 左の写真は私のネウマ譜の楽譜です。 

 今回はネウマ譜の楽譜で中心的に使われるラテン語について説明を致します。

 ご興味の無い方は、この記事の一番下のリンクから、楽曲をお聞き下さい。

 ラテン語は、我々日本人の漢字に相当するような言語で、漢字文化圏に属する我々が漢字を音読みと訓読みをしているように、ヨーロッパ諸国でも使用されていました。

 つまり、漢字本来の発音に従ったのが音読みで、我らの「やまとことば」に漢字の意味に合わせたのが訓読みです。

 以下にラテン語とそれに対応する英語を書き記します。

ラテン語:               英語           日本語   
Kalendarium Romanum      Roman Calendar      ローマ暦
Januarius              January          一月
Februarius             February          二月
Martius               March           三月
Aprilis                 April                四月
Maius                May            五月
Junius                June               六月
Julius                July            七月
Augustus              August             八月
September              September            九月
October                  October              十月
November              November              十一月
December              December        十二月

Tabella Festorum Mobilium 
                    Movement Holiday Table
                                  移動祝日表


 如何ですか?月名は途中までは確かに違うなぁと思われたと思います。しかし、途中からは同じスペルになっていますね?

 それから、移動祝日表などは、祝日がFestorum(フェストルム)とHolidayと、ぜんぜん違った単語になっている事に気が付かれたと思います。本来はFeastとラテン語由来の単語も有りますが、このように我々の音読みと訓読み、そして自分達固有の単語に移行してしまうケースもあります。

 以上のように、ヨーロッパ各国はラテン語文化圏で、各国の民族性とのバランスの上で、自分達の文化を築き上げております。

 ネウマ譜も西洋音楽の基礎として、上記のような音楽基礎としての重要な役割を持っていましたが、バロック期以降次第に使われなくなり、現在に至っています。


 さて今日は何を聴いて頂いたら宜しいでしょう?

 十月はハローウィン・・・・。「死者の日」の典礼が有る月ですね?


s-Dies irae1.jpg Omnium Fidelium Defunctorum Missae Pro Defunctis から 「Dies irae ディエス・イレ=怒りの日」を聴いて頂きたいと思います。

 「Dies irae 」は皆様がご存知の様に、ルネッサンス期音楽から多くの名曲が作曲されています。

 ルネッサンス後期のジョヴァンニ・ピエルルイージ・ダ・パレストリーナ(パレストリーナ村のジョヴァンニ・ピエルルイージ)のレクイエムでも美しい曲が作られていますね?

 クラシックまで続くこの「Dies irae 」は、下記のCanto(カント=歌)がその原点です。

 お聴き下さい。


 左の写真は私のネウマ譜の楽譜です。 










s-Dies irae2.jpg



Dies irae

 左の写真は私のネウマ譜の楽譜で
す。  

 今日はネウマ譜で書かれた「グレゴリオ聖歌」の前に存在していたローカルな聖歌をご紹介出来ればと考えておりました。

 それはアンブロシオ聖歌モサラベ聖歌です。

 生憎youtube で検索してみましたが、流石にローカルな聖歌だけあって、検索に引っ掛かりませんでした。

 アンブロシオ聖歌はイタリアのミラノで歌われていた聖歌で、三世紀頃から発生し始めて4世紀にはその名がミラノ司教の名から付けられたと云う歴史があります。
 これはグレゴリオ聖歌と比較すると単調なメロディが多く、逆に複雑なメロディはグレゴリオ聖歌よりもっと複雑な曲もあります。
 結局、この聖歌はグレゴリオ聖歌に席巻され、忘れ去られました。写本が残っていますので、これも解読研究中の楽曲です。

 モサラベ聖歌はスペインのごく一部で6世紀頃から歌われ続けて居ました。
 しかし、これもグレゴリオ聖歌に統一された為に、一部の修道院を除いて歌われなくなりました。

 この聖歌には面白い伝説があって、モサラベ聖歌とグレゴリオ聖歌が、どちらが優れているかを、はっきりとする為に、両聖歌の楽譜を火の中に投じたそうです。正しくて優れている聖歌は燃えずに残ると・・・・。

 結果は、グレゴリオ聖歌はあっという間に燃えてしまい、モサラベ聖歌はいつまでも燃えずに残ったそうです。

 しかし、モサラベ聖歌はやはり使われなくなったと云う事です。


 上記の二つの聖歌のデータは、今度ゆっくりと探す事にして、今日は何を・・・・。?

s-Requiem intro.jpg
 昨日の死者の日の典礼の入祭唱「Requiem aeternam dona eis Domine 」を聞いて戴きましょう。

 同じカトリック司祭が歌っていますが、少しずつ歌唱法が違います。お気づきになられますか?

Requiem aeternam dona eis Domine(入祭唱)

Requiem aeternam dona eis Domine(入祭唱)


 左の写真は私のネウマ譜の楽譜です。












s-Requiem gra.jpg


Requiem aeternam dona eis Domine(昇階唱)

最後の曲は説教台の階段を登る時に歌われるので、「昇階唱」と云います。この歌は綺麗な旋律なので、私も良く歌っている歌です。

 左の写真は私のネウマ譜の楽譜です。 

 ここで一息入れませんか?

 今回はネウマから離れてしまいます。

 Carmina-Burana2.jpgカール・オルフ(Carl Orff、1895年7月10日 - 1982年3月29日)はドイツの作曲家。ミュンヘンに生まれ、同地で死去。

 私は混声合唱団に居た頃、カール・オルフが作曲した「カルミナ・ブラーナ」を歌った事が有ります。
 日本で最初に歌ったのは、確か神戸の合唱団だった様に記憶しています。ただ彼らはオーケストラも無く、踊りも無い不完全な演奏でした。
 私の属している合唱団が、日本では最初の完全な演奏形式でコンサートを開いた事になります。
 中世の吟遊詩人の詩から採られた歌詞に、カール・オルフの独創的なイメージで作曲し、壮大な曲として完成しました。

 下記はウィキペディア(フリー百科事典)よりの引用です。

 1803年、ボイレン修道院が国有化されることになり、調査が行われた。
 その結果、図書室から古い歌を集めた写本が発見された。
 その中の歌は約300編にのぼり、ラテン語、古イタリア語、中高ドイツ語、古フランス語などで書かれていた。歌詞の内容は若者の怒りや恋愛の歌、酒や性、パロディなどの世俗的なものが多く、おそらくこの修道院を訪れた学生や修道僧たちによるものと考えられた。
 中にはネウマによって簡単な旋律が付けられているものも10曲(9つの歌及び『賭事士たちのミサ曲』という曲)ある。
 これらの写本は11世紀から13世紀の間に書かれたと推測され、『カルミナ・ブラーナ』(ボイレンの歌)という題名で編纂され、1847年に出版された。現在、写本はミュンヘンのバイエルン州立図書館に所蔵されている。

 なお、ネウマ譜が残っている歌については別の写本などからネウマを復元する試みがいくつかなされており、CDもリリースされている。

 ここまでがカルミナ・ブラーナの説明の引用です。
 上記の様に、カルミナ・ブラーナはネウマ譜で書かれた写本も在るほど、当時ではポピュラーな歌だったらしいです。


 さて、カール・オルフのカルミナ・ブラーナに戻ります。

 この曲は混声8部に別れて、私はセカンド・テナーに配属されました。
 当時に私が使っていた楽譜を掲載致しておりますので、最初のページだけですがご覧下さい。

 第1曲目は、「おお、運命の女神よ(合唱) O Fortuna (Chorus) 」です。
 繰り返しますが、この曲は、合唱・オーケストラ・舞踏の三要素が在って、始めて完成されたスタイルです。
 今回、ご案内するyoutube のデータは、全曲で1時間12分ほどの演奏時間ですが、舞踏は無い演奏です。

 お時間のある時に、ゆっくりとお聞き下さい。

カルミナ・ブラーナ

オルフ:カルミナ・ブラーナ

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価格:2,800円(税込、送料別)

カルミナ・ブラーナのCDです。写真をクリックすると販売サイトに入れます。
 

 前回紹介させて頂いた「カルミナ・ブラーナ」は如何でしたか?
 中世の写本では、ネウマ譜で記録された楽曲も有りますので、とても興味深いと思っています。

s-No1_Sanctus.jpg 私の持っているネウマ譜の楽譜は、私が生まれる前に製作されたものです。それで出来るだけスキャナなどには掛けたくないと思っていました。
 しかし、本格的にネウマ譜の説明をしようと思うと、やはり登場して貰わなければならないようです。

 今回は、第一サンクトスを紹介させて頂きます。
 後世のミサ曲でも必ず取り上げられている曲です。「聖なるかな」と言う題の歌になります。

Sanctus,Sanctus,Sanctus Dominus Deus Sabaoth.
聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな 万軍の神なる主。
Pleni sunt caeli et terra gloria tua.
主の栄光は天地に満つ。
Hosanna in excelsis.
天のいと高きところにホザンナ。
Benedictus qui venit in nomine Domini.
ほむべきかな、主の名によりて来る者。
Hosanna in excelsis.
天のいと高きところにホザンナ。

 ここで、気が付かれた方がいらっしゃると思います。
 主と云う単語が、DominusとDominiと違った表記になっていますね?
 ラテン語はドイツ語やスペイン語の様に、語尾変化をする言語です。
 ラテン語の品詞は全部で八つ有り、名詞、形容詞、代名詞、動詞、副詞、前置詞、接続詞、間投詞が存在しています。
 この中で、名詞、形容詞、代名詞、動詞は、先程の様にその使い方によって語尾が変化します。

例えば、薔薇(Rosa)の語尾変化を下記に示します。
Rosa pulchra est.        薔薇は美しい。
Rosam amo.                   私は薔薇を愛する。
Rosae odor est suavis.       薔薇の香りは快い。
Rosa ornat Iulia mensam.   ユーリアは机を薔薇で飾る。
Rosae aquam do.              私は薔薇に水をやる。
Rosa,pulchra esto.            薔薇よ、美しくあれ。

 上記のように、語尾が変化して出来る形を格(casus)と云います。さも、日本語のテニヲハの代わりを語尾変化で表しているわけです。
 ラテン語は西洋の言語の中で一番難しい文法を持った言語で、ラテン語を志す人にとって辛苦を味わって勉強する必要があります。

 それでは、第一サンクトスをお聞き下さい。

第一サンクトス

 

 さて今回は、前回に続いてミサ曲ではポピュラーなサンクトスの曲を聴いて戴きたいと思います。

 今回はネウマ譜が映っているデータをわざわざ選び、私のネウマ譜をスキャンしなくても良いようにしてしまいました。

Sanctus,Sanctus,Sanctus Dominus Deus Sabaoth.
聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな 万軍の神なる主。
Pleni sunt caeli et terra gloria tua.
主の栄光は天地に満つ。
Hosanna in excelsis.
天のいと高きところにホザンナ。
Benedictus qui venit in nomine Domini.
ほむべきかな、主の名によりて来る者。
Hosanna in excelsis.
天のいと高きところにホザンナ。

 第八の典礼の固有聖歌は「天使ミサ」と呼ばれ、通常のミサで歌われる曲です。


 前回のラテン語の説明で、格(casus)について触れたので、その説明が必要ですね?
 薔薇(rosa)の変化を例示しておきます。
1.主格(nominatinus)    rosa
2.属格(genitivus)       rosae
3.与格(dativus)        rosae
4.対格(accusativus)    rosam
5.奪格(ablativus)       rosa
6.呼格(vocativus)      rosa!
7.地格(locatvus)      この格はほんの少しだけしか使われていません。

 それでは第八サンクトスをお聴き下さい。
s-VIII Sanctus.jpg

第八サンクトス

第八サンクトス
 

さて、11月28日からクリスマスを迎える待降節に入りました。
今回は、その降誕祭(クリスマス)の第一ミサの典礼を説明させて戴きます。

In  Nativitate Domini  Nostri  Jesu      Chrisiti  ad  Primam Missam in  Nocte.
の  ご降誕    主の    我等の   イエズス  キリスト  の  第一    ミサ     の 深夜
我等の主イエズス・キリストの御降誕の深夜の第一ミサ。


Dominus dixit    ad  me:  Filius meus es   tu,   ego hodie genui  te.
主は     仰せられた に  私に  子    私の である 貴方を  私は 今日  産んだ  貴方を
主は私に仰せられた。貴方は私の子である。私は今日貴方を産んだと。

この後、栄唱が続き、主題が繰り返されます。

カトリック教会では、クリスマス・ミサを大昔、クリスマスイブの真夜中の0時から第一ミサを、翌日25日の夜明け前に第二ミサを、そして午前中に第三ミサを執り行っていました。
この曲はIntroitos(入祭唱)と言って、司祭(司教or神父)が。お御堂に入る時に歌われる聖歌です。
最初のyoutubeの画像のように、お御堂に入祭行列を組んで入堂します。
画像は英国のウエストミンスター大聖堂の動画ですが、英国国教会(聖公会)の典礼は、カトリックと殆ど同じなので、ご案内致します。
残念な事に、日本ではこの様なネウマ譜で書かれたグレゴリオ聖歌は、現在歌われておりません。

司教(枢機卿、大司教を含む)は、ミトラを被り、スータンの上にアルバを着ています。
司祭(神父)はスータンの上にアルバを着ています。
侍者は黒いスータンの上に白いスルピリを着ています。

この曲は個人的にとても好きな曲なので、反響の多い浴室で湯船に浸かりながら良く歌っています。

では、下記のリンクをクリックされてお聴き下さい。今回は画像でネウマ譜も表示されていますので、私のネウマ譜はお休みを戴きます。


Introitus - Dominus dixit ad me
Westminster Cathedral Choir


Introitus - Dominus dixit ad me
楽譜の最初の、DとOの間の記号が、ファの音の線を表す記号です。ですからレーファ ソーファ ファ ファ ファ レ と音階が記されている事になります。ポリフォニーの現代音楽のように何分の何拍子と云う概念はありません。


Introitus - Dominus dixit ad me


Introitus - Dominus dixit ad me
表示されている楽譜の最初のDominusのDが落書きの様に思われていらっしゃる方が居られると思います。
これは装飾文字で最初の文字を飾る習慣から来ています。古い典礼のネウマ譜などは、この最初の装飾文字が金で飾られて居る楽譜も存在しています。




Introitus - Dominus dixit ad me




ステレオでお聴きの方は、途中で歌隊が左右に分かれて歌っているのにお気づきになられたと思います。
これは交唱と呼ばれる歌い方のスタイルで、カトリックでは基本的にこの様な歌い方をする習慣が続いています。
 

皆様がよくご存知のクリスマス音楽とは全然違った歌だと思いますが、これらのラテン語の歌はその起源に遡ると約二千年の歴史が有ります。

グレゴリオ聖歌::クリスマスのミサ曲

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価格:2,100円(税込、送料別)


教会音楽を研究実践している聖グレゴリオの家聖歌隊による、
シリーズ第1弾。日本でのグレゴリオ聖歌研究の第一人者、
水嶋良雄が指揮した、降誕祭で歌われる4つのミサ曲を収録。
リリース当初から高い評価を得た録音。  
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価格:9,176円(税込、送料込)


  一枚目のCDに降誕祭のグレゴリオ聖歌が入っています。  

さて、ノンビリとしていたら、肝心のクリスマス・ミサが済んでいたと云う事になってしまいます。

今回はミサの順番に従って、youtubeに保存されているデータをご案内致します。


Introitus : Dominus dixit ad me・・・
入祭唱:主は私に仰せられた。・・・

Kyrie : Kyrie eleison,Criste eleison,Kirie eleison.
Kyrie IX from Mass IX, Gregorian Chant
キリエ(第九 キリエ):主よ憐れみたまえ、キリスト憐れみたまえ、主よ憐れみたまえ。
以前にも説明致しましたが、「キリエ」はウズアリスに記載されている唯一のギリシャ語の聖歌で、他は全てラテン語です。

Gloria : Goria in excelsis Deo
Gloria IX from Mass IX, Gregorian Chant
栄光の賛歌(第九 グロリア):天のいと高き所には神に栄光。・・・

Oratio : Deus, qui hanc sacratissimam noctem ・・・・
集祷文:この至聖なる夜を・・・。

Epistola (TIT.2, 11-15) : Lectio Epistolae beati Pauli Apostoli ad Titum.
書簡(ティトへの書簡 第2章 11−15):
使徒パウロのティトへの書簡の朗読

Graduale : Tecum principium ・・・・・
昇階唱:最高の権威は・・・。
この聖歌も好きで、お風呂場で良く歌います。

Alleluis : Alleluia,alluluia・・・
アレルヤ唱:アレルヤ、アレルヤ、・・・
この聖歌も好きで、お風呂場で良く歌います。

Evangelium : Sequentia santi Evangelii secumdum Lucam.・・・
聖福音書:(ルカ 第2章 1−14)・・・

Credo : Credo in unum Deum,・・・
信仰宣言:我は信ず、唯一の神・・・・

Ofefertorium : Laetentur caeli et exsultet ・・・
奉納唱:主のみ前に天は喜び・・・・

Oratio super Oblata : Accepta tibi sit, Domine,・・・
密唱:主よ、願わくは今日の・・・・

Praefatio : Dominus vobiscum.・・・
序唱:主は皆さんと共に・・・・

Sanctus IX from Mass IX, Gregorian Chant
感謝の賛歌(第九 サンクトス):聖なるかな、聖なるかな・・・

Doxologia : Per quam haec omnia,・・・
ドクソロギア:主よ、御身は彼によって・・・

Pater Noster : Oremus ; praeceptis salutaribus・・・・
主祷文:祈りましょう、主の教えを守り・・・
上記の主祷文は待降節の聖歌ではありませんが、見当たらなかったので・・・。

Agnus Dei IX from Mass IX, Gregorian Chant
平和の賛歌(第九 アグヌス・ディ):神の子羊、世の罪を除きたもう主よ・・・

Cummunio : In splendoribus Sanctrorum,・・・・
聖体拝領唱:聖徳の輝きの中で・・・

Postcommunio : Oremus , Da nobis, quaesumus,
聖体拝領後の祈り:祈りましょう、我等の神なる主よ。・・・・

Ite , Misa est.
閉祭唱(第九 イテ・ミサ・エスト):行きなさい、ミサは終わった。


この様にクリスマスイブの真夜中の0時に、降誕第1ミサは行われていました。
 

更新が滞ってしまいましたね。申し訳在りませんでした。私と我が家族にとって、去年は悲しく寂しい年になりました。10月31日に私の母を亡くし、12月31日には嫁ハンの父を同じ肝臓癌で亡くしたのです。新年を祝う間もなく、葬儀等に追われ、やっと普段の生活に戻れそうになりました。

話題を暗い話から、ネウマ譜について・・・・。
今回は去年の内に説明が出来なかった御降誕(クリスマス)の聖務日課についてお話し致します。

カトリック教会は日曜日の御ミサ(聖餐式)以外に、毎日の聖務日課と云う重要な典礼を持って居ます。これらの典礼の起源は、ユダヤ教から受け継いで、更にカトリック教会で発展してきた典礼です。
一般の信者には関係の無い典礼ですが、聖職者(司教神父)と、信者の一種である修道生活者である修道者(シスターやブラザー)達が、毎日行っている典礼です。最近では熱心な信者が、それぞれの国の言葉で作られた聖務日課を唱えるようになりましたが、今回説明するラテン語の聖務日課とは幾分違っています。

一日の中で8回の時課に分けて、御聖堂で祈りと聖歌を唱えています。

朝課  Matstinum
賛課  Laudes
1時課 Prima
3時課 Tertia
6時課 Sexta
9時課 Nona
晩課  Vespers
終課  Completorium

さて、今回はSecundae Vesperae in Nativitate Nativitate Domini Nostri Jesu      Chrisiti(我等の主イエズスキリストの御降誕の第2晩課)から、PLSALUM 109(詩篇109)をご紹介致します。

PLSALUM 109(詩篇109)

PLSALUM 109(詩篇109)、PLSALUM 110(詩篇110)


今回は以上でご勘弁下さい。まだ、母と義理の父を亡くした心の空虚感を癒しておりませんので・・・。


ところで、まだラテン語の言語学的分類を、皆様に説明させて戴いておりませんね?

ラテン語は:
インド・ヨーロッパ祖語(印欧祖語)
  インド・ヨーロッパ語族
    イタリック語派
      ラテン・ファリスク語群
        ラテン語
上記の様に分類されています。

では、我々の日本語は何の語族に属しているのでしょうか?
私の小説の中でも触れていますが、私が高校生だった頃は「
ウラル・アルタイ語族」と云う学説が在って、我々の日本語とお隣の韓国・北朝鮮語が、そのウラル・アルタイ語族に属していると考えられていました。
しかし、現在はその学説は否定され、
アルタイ諸語に属していると考えられ、日本語と韓国語もそれに含まれると考えられています。

また、この続きを更新させて戴きますので、ご期待下さい。
 

更新が滞ってしまいましたね。申し訳ありませんでした。

ところで、聖週間が昨日終わりました。今回は4月18日から24日までの一週間が聖週間でした。

聖週間とは、カトリック教会の一年間の典礼の中で一番重要な、クリスマスより大事な典礼が執り行われる一週間です。

聖月曜日の典礼から始まり、火、水、木、金、土の各典礼と日曜日のご復活の大祝日(イースター)がそれらの典礼になります。

いつものようにyoutubeのデータでグレゴリオ聖歌をお聴き下さい。

今回はその中の聖木曜日の典礼に付いてご説明をさせて頂きます。

Feria V. In Coena Domini , De Missa Salemrni Vespertina


先ず最初は入祭唱
相変わらずの私が生まれる前に印刷された「Misa et Officii」からスキャンしたネウマの楽譜です。

s-Ad Vespertina intro.jpg
Introitus:
Nos autem gloriari oportet in cruce Domini nostori Jesu Christi ・・・・ 

Nos autem gloriari oportet in cruce Domini nostori Jesu Christi

Nos autem gloriari oportet in cruce Domini nostori Jesu Christi



昇階唱
今回はネウマ譜が表示されていますので、私のウズアリスはお休みです。

Graduale :
Christus factus est pronobis obediens usque ad mortem , morten autem crucis . 

Christus factus est pronobis obediens

Christus factus est pronobis obediens

この曲の歌詞は、バロックやクラッシクでもよく用いられていて、有名な楽曲も多いですね?



奉納唱:再びウズアリスの登場です。

s-Ad Vespertina ofe.jpg
Oferitorium :
Dextera Domini fecit virtutem , dextera Domini exaltavit me ・・・ 

Dextera Domini fecit virtutem


聖体拝領唱:ネウマ譜が表示されていますので、私のウズアリスはお休みです。

Cummunio :
Dominus Jesus postquam coenavit cum discipulis suis , lavit pedes eorum ・・・ 

Dominus Jesus postquam coenavit cum discipulis suis

今回は聖木曜日の盛式ミサ典礼で、ウズアリス(Misa et Officii)に、その楽譜が載っている聖歌をご紹介させて頂きました。

次回は聖金曜日の典礼をご紹介致します。 
聖金曜日の典礼

聖木曜日の典礼のご説明から、また更新が滞ってしまい申し訳ありませんでした。

さて、今日は聖週間の中でも特別に荘厳な典礼になる聖金曜日の典礼をご説明致しましょう。

カトリック教会の典礼は通常「ミサ典礼」と言って、パンと葡萄酒がキリストの御身体と御血に変化する聖変化サクラメント=秘跡」が中心になる典礼です。

しかし、聖金曜日の典礼は、この聖変化の秘跡が行われません。
御聖体拝領は有りますが、ミサを執り行わないので、事前に準備された御聖体が拝領する会衆に与えられます。

ミサの中心の聖変化の秘跡の代わりに「十字架の崇敬」と云う儀式が執り行われます。

この為の専用の十字架に紫の布が被さられて、お御堂の祭壇まで運ばれます。

十字架に掛かっている紫の布を少しだけ外し、神父(司祭)が十字架を会衆に高く掲げて
Ecce Lignum Crucis in quo salus mundi pependit 見よ!世の救いの十字架の木を!」
と、高らかに宣言します。

すると会衆が
Venite adoremus いざ!拝み讃えよう!」
と応えます。

次にまた十字架に掛かっている紫の布を少しだけ外し、再び会衆に上記の様に宣言し、会衆も同様に応えます。

三回目に十字架に架けられた布が全て取り除かれ、会衆に向けて掲げられて、同様に宣言され、会衆もまたそれに応えます。

いつもの様に青色のテキストをクリックすると、youtubeの該当するページが新しく開いて演奏が始まります。
では、お聴き下さい。

今回は私の「リベール・ウズアリス」をスキャンせずに、カメラで接写してみました。
何分、私が生まれる前に製本された日本でも貴重な典礼書なので、出来るだけダメージを与えたくありません。
ご覧下さい。
これがこの曲のネウマ譜(四線譜の楽譜)です。
s-eccelignumcrucis.jpg


では、お聴き下さい。

正統的な歌唱法で歌われています。
この様にトーンが毎回上がっていきます。

 Ecce Lignum Crucis



これは、最近の風潮で女性の方が歌われていますね?
大昔の習慣では女性は歌えませんでした。
少しお聴き難いかも知れませんが・・・。

 Ecce lignum Crucis



去年の10月06日に皆様へご案内させて戴こうと思って居ました「アンブロシオ聖歌」ですが、ジョバンニ神父の説明だとアンブロシオ聖歌由来の旋律のようですね?
アンブロシオ聖歌の名の由来は、イタリアのミラノの大昔の司教アンブロシオの名前から付けられています。それからグレゴリオ聖歌も教皇グレゴリオから名付けられています。
ジョバンニ神父が最後に画面に映す「リベール・ウズアリス」は、私のと違う版の様ですね?

 ECCE LIGNUM CRUCIS, Antifona ambrosiana



最後の下記の映像は、聖金曜日の典礼の「十字架の崇敬」を映しています。
どの様に儀式が進められるかが、この映像で理解なされると思います。
この様に、神父が宣言する度に会衆が応え、その後に跪いて十字架を崇敬します。

 Ecce lignum

次回は聖土曜日の典礼についてご説明を致します。 
聖金曜日の典礼

前回の記事で次回は聖土曜日の典礼をご案内致しますと記載致しましたが、聖金曜日の典礼から抜け出せそうに有りません。

聖金曜日は考えて見ると、有名な曲が多いので、それをご案内せずに次の聖土曜日の典礼に移る訳にはいけませんでした。

先ず、とても有名なResponsorium(レスポンスリウム)Tenebrae Factae Sunt(あまねく暗くなりて)をお聴き下さい。
この曲は中世から聖週間典礼改正(1956年)に依って変更されるまでは、聖木曜日の夕方の典礼で歌われていました。
改正後は聖金曜日の朝に歌われるようになった曲です。


s-TenebraeFactaeSunt.jpg
写真は私のUsualisで、今回も本の保護の為にスキャンを掛けずに、カメラで撮影を致しました。


最初に聴いて頂くのはグレゴリオ聖歌ではなく、イタリアのミラノを中心として歌われていたアンブロシオ聖歌です。
探せばあるのもですね?これもネウマ譜で記載されています。

TENEBRAE FACTAE SUNT, Responsorio ambrosiano



このデータは、ネウマ譜が表示されていますので、私のウズアリスはお休みを頂こうかと思いました。
でも上記の写真のように一目で全体を見れるほうが良いですよね?
アンブロシオ聖歌とは違うのがお判りになられると思います。
私はアンブロシオ聖歌とは付き合いが有りませんので、こちらの聖歌のほうがシックリとしています。 

Tenebrae Factae Sunt 



最初に検索で当たったのがこの聖歌のデータで、仕方なくウズアリスを取り出してネウマ譜を撮影いたしました。 

Tenebrae factae sunt 





前回の記事でご紹介させて頂いたEcce lignum Crucis(見よ!十字架の木を!)です。
もう一度お聴き下さい。



s-PopuleMeus.jpg
写真は私のUsualisで、今回も本の保護の為にスキャンを掛けずに、カメラで撮影を致しました。 


Ecce lignum Crucis 




十字架から紫色の布が取り去られた後、会衆(カトリック信者)が、祭壇に進み出て各自その十字架を崇敬しますが、その時に歌われる聖歌が下記の聖歌です。
Improperia(詰問)と呼ばれていますが、Popule Meus(我が民よ)と主なる神が、信者達に詰問している聖歌になります。
この聖歌の面白いところは、途中からギリシャ語とラテン語が交互に歌われることです。
下記のデータには、ギリシャ語とラテン語の歌詞のテロップが表示されています。
このデータはネウマ譜が表示されない代わりにラテン語とギリシャ語の歌詞が表示されていて良いですね? 

Improperia (Popule Meus) 




こちらのデータもネウマ譜が表示されていないので・・・。
私のウズアリスが登場しました。 

Improperia Maiora - Popule




如何でしたか?
最近は「もう一つのグレゴリオ聖歌」と云う他のページを作り、Monk(修道者)の格好で現代のPopを歌っているグループを紹介させて頂いています。
彼らは本来のグレゴリオ聖歌を正確に歌えていますので、歌唱力はあると思っています。
気分転換にこちらのページもご覧下さい。

もう一つのグレゴリオ聖歌 
今日はグレゴリオ聖歌から離れて

暫く、堅苦しくグレゴリオ聖歌の説明とご紹介を続けてしまいました。

気分転換と言っては何ですが、もう一つのネウマ譜を用いた教会音楽のグループをご紹介致します。

大昔にローマ帝国が西と東に別れた時、同様にキリスト教会も東西に別れてしまいました。

その当時は教会音楽の黎明期で、キリスト教の母体であったユダヤ教の典礼音楽から独り立ちをし始めた頃です。

西ローマ帝国の教会は皆様ご存じのカトリック教会になり、東ローマ帝国の教会は正教会になりました。

分裂する前から、教会音楽はネウマ譜を用いて、典礼音楽を歌っておりました。
二つに分かれた教会は、そのまま別の方向に典礼音楽が発展する事になります。
西洋で五線譜が発明されるまではネウマ譜が、ヨーロッパ音楽の基礎として使われてきた事は、以前からお話ししてきた事ですね?
ではギリシャを中心とした正教会は、どうだったのでしょうか?
長い間、ネウマ譜は教会音楽の楽譜としてその地位を守っていました。
しかし、グレゴリオ聖歌と違って、ビザンチン聖歌(正教会の聖歌)は早い段階で通奏低音が加わって、ポリフォニー化して発達していたのです。

ここで、私の個人的なビザンチン聖歌の印象を・・・。
グレゴリオ聖歌を女性的な聖歌として受け取れば、ビザンチン聖歌は男性的な力強い響きを持って居ると思います。

それでは、ギリシャ正教会の聖歌をお聴き下さい。
私はギリシャ語もロシア語も判りません。
ですから、それぞれの曲の説明が出来ません。申し訳有りません。


Greek Orthodox Christian Byzantine Chant


Greek Orthodox Christian Byzantine Music 2


Greek Orthodox Christian Byzantine Music 3


Greek Orthodox Christian Byzantine Chant 4


Greek Orthodox Christian Byzantine Chant 5


如何でしたか?
これまでご案内致して居ります「グレゴリオ聖歌」とは全然違った聖歌に聞こえませんか?

私はオリエンタルな響きを持った聖歌として聞こえます。
西洋的な物を感じさせない音楽として発達したように思います。


Kyrie Eleison

キリエ・エレイソン(主よ・憐れみたまえ)私が判るギリシャ語です。
実際に聴いてみると、全然判りませんでした。


ここから下のデータは、正教会で大きな勢力であるロシア正教会の聖歌です。

学生の頃に、ロシア聖歌(ビザンチン聖歌)のネウマ譜を見た事が有りますが、「これがネウマ譜!!」と思わず声が出るほど、私のネウマ譜とは見た目が違っていました。


Russian Orthodox Chant Valaam


Russian ORTHODOX superb Monasteries and Chants



下記の聖歌は、ここで扱おうかどうしようかと悩みましたが、ポリフォニーのロシア聖歌です。
有名なロシアの作曲家(チャイコフスキー、ラフマニノフ、チェスノコフなどなど)の多くが、ロシア聖歌を作曲して居ます。

合唱曲としても美しいこれらの曲を皆様にも聴いて戴きたいと思いました。


Russian Orthodox chant


Russian Orthodox Choir, Sacret Russian singing Chesnokov's
"Gabriel Appeared"

チェスノコフ作曲の「大天使ガブリエルが現れ」です。
有名な曲ですので、皆様もお聴きになられた事が有ると思いますが・・・。


ここから今日(28日)に追加した記事です。


Благовест - Да исправится молитва моя.

この曲は私の大好きな曲です。次回の更新の時に記載させて戴こうかと思いましたが、ネウマ譜から脱線し過ぎますので、この記事に追加させて戴きました。
これも有名な曲なので、皆様もよくご存じの曲だと思います。


Арт-группа "БЛАГОВЕСТ" - БОГОРОДИЦЕ ДЕВО
この曲も有名な曲ですが、表記がロシア語なので日本語での題名が思い出せません。
でも、美しいハーモニーですね!


Богородице Дево, радуйся

私達カトリック教会の「アベ・マリア」に相当する天使祝詞と思います。
正教は私達より聖母マリアへの崇敬が強いので、色々な聖歌が作曲されています。


Богородице Дево, радуйся

同じ天使祝詞ですが、何故かグレゴリオ聖歌風な旋律で、私にはとても親近感を持たせて呉れる聖歌です。
それでも、同じ男性の唱方でも、どうしてもグレゴリオ聖歌と比較して男性的に聞こえるのが不思議だと感じています。


Богородице Дево Радуйся - Hail Mary

ちょっと正教の典礼を垣間見て下さい。
これは聖母マリアへの崇敬をしているところです。
正教の場合は、聖母マリアに対する信仰が有りますが、私達カトリック教会は、信仰ではなく信心業になります。
つまり教会での公の信仰ではなくて個人的な信心なので、この様な光景は見られません。


グレゴリオ聖歌と袂を分かって、発展したビザンチン聖歌は如何でしたか?
世界中には、グレゴリオ聖歌愛好家の数には適いませんが、ビザンチン聖歌愛好家の方々も多くいらっしゃいます。
これを機会にビザンチン聖歌もお聴き下さい。


今回のご案内は如何でしたか?

最近は「もう一つのグレゴリオ聖歌」と云う他のページを作り、Monk(修道者)の格好で現代のPopを歌っているグループを紹介させて頂いています。
彼らは本来のグレゴリオ聖歌を正確に歌えていますので、歌唱力はあると思っています。
気分転換にこちらのページもご覧下さい。


もう一つのグレゴリオ聖歌  
聖母被昇天の大祝日 8月15日

ご復活のご案内が途中なのに、もう聖母被昇天の大祝日が過ぎてしまいました。

日本は8月15日と言えば敗戦記念日ですが、カトリック教徒はそればかりでなく、「聖母被昇天の大祝日」をお祝いしています。

カトリック教会の三大お祝い日はご復活、クリスマス、そして「聖母被昇天の大祝日」を盛大に祝っています。

キリスト教の他の正教と新教と違って、私たちは聖母マリアが天に引き上げられた(被昇天)と信じています。

今回はその聖母被昇天の大祝日の典礼をご紹介致します。


In Festo Assumptionis B. M. V.


入祭唱:

SIGNUM MAGNUM

SIGNUM MAGNUM

SIGNUM MAGNUM



昇階唱:

Audi Filia



昇階唱とアレルヤ唱:
Audi filia ; Assumpta Est


アレルヤ唱:
Alleluia: Assumpta Est



奉献唱:
INIMICITIAS PONAM



楽天ブックスで上記の典礼のCDが有ります。下記のリンクからご購入下さい。

グレゴリオ聖歌 教会堂開基祭のミサ/ 聖母被昇天の祝日ミサ


如何でしたか?最近は「もう一つのグレゴリオ聖歌」と云う他のページを作り、Monk(修道者)の格好で現代のPopを歌っているグループを紹介させて頂いています。
彼らは本来のグレゴリオ聖歌を正確に歌えていますので、歌唱力はあると思っています。

気分転換にこちらのページもご覧下さい。
 

もう一つのグレゴリオ聖歌  
2011年12月22日作成
クリスマスですね!

気が付くともうクリスマス!全世界でクリスマス一色ですが、日本ではなじみの無い東方典礼(ギリシャやロシア、中近東、アフリカなどの正教会)のクリスマスなどの典礼をご紹介致します。

私はカトリックですが、先ず誤解の無いように説明いたしますが、カトリックには派が有りません。
よく「イエズス会派」とか「フランシスコ会派」などと言われていますが、これらは修道会の名前でプロテスタントや正教などの派閥では有りません。
カトリックは世界中の国々の教会が一つの教会です。

プロテスタントには、ルター派やカルバン派などの世界中で四百以上の派に別れ、日本でも二百以上の派が活動しています。

正教会には大きく分けて三つの派が存在しています。
下記のウイキペィアのページをご覧下さい。
正教会

メルキト派・カルケドン派;

下記のウイキペィアのページをご覧下さい。
ギリシャ正教

いつものように右記のような青色のリンクをクリックするとyoutubeの該当曲のページに入れます。

Xristos Gennatai, Greek Orthodox Christian Chant


Xristos Gennatai, Greek Orthodox Christian Chant


Orthodox Christmas Canon


下記のウイキペィアのページをご覧下さい。
ロシア正教会

Orthodox Christmas in Russia


Christmas Eve Mass at Russian Orthodox Church


Кирилл надел патриарший куколь
大主教の叙階式(祝聖式)??


Освещаване на мирото
お御堂内での説教台で聖福音書が朗読されています。
朗読が終わると、主式司祭の祝福があります。
正教のお御堂は、ユダヤ教の神殿に良く似た構造で、会衆席、聖所、至聖所に分かれ、聖体祭儀が行われるのは至聖所で、一般会衆からは見ることが出来ません。
映像でお判り頂けると思いますが、イコノスタシス「聖障(せいしょう)」と呼ばれる壁で仕切られています。


Освещаване на мирото
これから聖変化(種無しのパンがキリストの体に変化すると言う儀式)に入ります。
次々と至聖所から司祭たちが出てきて両手の指を洗っていますが、これは私達カトリック教会でも同様の儀式があります。
カトリックでは珍しい複数の司祭による「共同司式」は、正教ではごく普通の聖餐式(御ミサ)の形式です。
映像の途中で何かを振り回していますが、これは「香炉」で、カトリックでも盛式ミサではよく行われています。
奉納行列の最後に種無しのパンと葡萄酒が入った聖具が至聖所に奉納されます。


Освещаване на мирото
ご聖体拝領は???
無いようです・・・。
会衆への祝福が終わると・・・・。
良く見ると、お御堂の片隅で「ご聖体拝領」が行われています。
私達カトリックとは儀式の順番が違っていますね。
その後「閉祭の儀」が有って、退堂行列が始まり、ごミサが終わります。



下記のウイキペィアのページをご覧下さい。
ルーマニア正教会


Christmass with Romanian Carols


Romanian Christmas Carol
Jesus's little cradle


Christmas at the Romanian Orthodox Church



下記のウイキペィアのページをご覧下さい。
ブルガリア正教会


Bulgarian Orthodox Chant


Bulgarian Orthodox Music



下記のウイキペィアのページをご覧下さい。
グルジア正教会

georgian orthodox church chant
Christ is born


Georgian Christmas Song



下記のウイキペィアのページをご覧下さい。
日本ハリストス正教会
お近くの正教会にいらっしゃってみて下さい。




非カルケドン派;

下記のウイキペィアのページをご覧下さい。
シリア正教会

christmas in syria
(syriac orthodox church in aleppo)



下記のウイキペィアのページをご覧下さい。
コプト正教会


Coptic Christmas Eve


Coptic Christmas



下記のウイキペィアのページをご覧下さい。
エチオピア正教会


Ethiopian Orthodox Tewahedo Church Christmas Song


St Lalibela Ethiopian Christmas



下記のウイキペィアのページをご覧下さい。
アルメニア教会


アルメニア正教会はどういうわけかクリスマスを1月6日に祝います。
Christmas at St. Vartan Armenian Cathedral


Christmas Liturgy in Antelias


Armenian Christmas Mass in Holy Land



如何でしたか?
この様に正教には多くの派や国々や民族に適合した教会が存在しています。
世界中でクリスマスの喜びを彼ら独自の典礼で祝っているのです。

申し訳有りませんが、先にも申し上げましたように、プロテスタント教会は余りにも種類が多いので説明し切れません。

また私達カトリックのグレゴリオ聖歌(ネウマ譜)の説明に戻ります。
ご精読有難う御座いました。

如何でしたか?最近は「もう一つのグレゴリオ聖歌」と云う他のページを作り、Monk(修道者)の格好で現代のPopを歌っているグループを紹介させて頂いています。
彼らは本来のグレゴリオ聖歌を正確に歌えていますので、歌唱力はあると思っています。

気分転換にこちらのページもご覧下さい。 

もう一つのグレゴリオ聖歌
2011年12月24日作成
我等の主イエズス・キリストの御降誕の日中の第三ミサ

本当は去年ご案内した深夜の第一ミサとこの第三ミサの間にあげられる第二ミサを検索していました。
しかし、探し当てられずに仕方なくこの第三ミサをご紹介致します。

In    Nativitate Domini  Nostri   Jesu       Chrisiti    ad  Primam Missam in   Nocte.
の ご降誕   主の  我等の イエズス キリスト の 第一    ミサ    の 深夜
我等の主イエズス・キリストの御降誕の深夜の第一ミサ。

第一ミサは、大昔はクリスマスイヴの深夜0時から執り行われていました。
盛式ミサなので、通常のごミサと違って二時間を越えることがよくあります。

第一ミサの後、信徒会館でお茶などを頂きながら、そのまま第二ミサを待ちます。



第二ミサは;
In    Nativitate Domini  Nostri   Jesu       Chrisiti    ad  Secundam Missam in   Aurora.
の ご降誕   主の  我等の イエズス キリスト の 第二        ミサ    の 曙(夜明け前)
我等の主イエズス・キリストの御降誕の夜明け前の第二ミサ。

と言って、クリスマスの太陽が昇る前から始まります。
Auroraは「曙」とか「夜明け前の光」と云う意味で、極地で見られる「オーロラ」の語源です。



In    Nativitate Domini  Nostri   Jesu        Chrisiti   ad  Tertiam Missam in    Die.
の ご降誕   主の  我等の イエズス キリスト の 第三    ミサ    の 日中
我等の主イエズス・キリストの御降誕の日中の第三ミサ。


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die
 
Introitus
入祭唱


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die
 
Kyrie
キリエ(第八 キリエ 主よ哀れみたまえ)


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die


Gloria
グロリア(第八 グロリア 天のいと高きところに栄光)


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die

Oratio et Lectio
祈願;
Oratio. Concede,quaesumus omnipotens Deus:・・・
第二朗読;
Lectio Epistolae beati Pauli Apostoli ad Hebraeos.・・・
使徒パウロに依るヘブライ人への手紙


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die

Graduale
昇階唱(説教台へ上っていませんが、本来はその階段を上る時に歌われる聖歌です)


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die
 

Alleluia
アレルヤ唱


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die
Evangelium
聖福音書の朗読


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die



Credo
信仰宣言(第三 クレド)


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die

Offertorium
奉献唱


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die
Praefatio
聖変化の秘跡への祈願


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die
 

Sanctus
聖なるかな(第八 サンクトス)


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die
Canon
聖変化の秘蹟(種無しパンと葡萄酒がキリストの体と御血に変化する秘跡)


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die
Pater Noster
主の祈り


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die
 
Agnus Dei
神の子羊(第八 アグヌス・ディ)


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die

Communio
聖体拝領唱


In Nativitate Domini Ad tertiam Missam in Die

Postcommunio
聖体拝領後の祈りと閉祭唱、退堂


これらのミサ典礼は、古い形式のミサ典礼で「背面ミサ」と呼ばれています。
司祭が会衆席に背を向けて、祭壇でミサ聖祭を執り行う形式です。

現在は「対面ミサ」と呼ばれて、祭壇が聖所中央に移動し、祭壇に向かう司祭が会衆席に向かう形になっています。

古い形式のミサも、司祭が先頭に立って会衆を導いているように思えるので良いと思います。

勿論、現在の対面ミサは一つの食卓(祭壇)を司祭と会衆が囲む、晩餐を連想させるので、この形式も素晴らしいと感じています。

今回は私の「LIBER USUALIS」が、ネウマ譜掲載の為に大活躍でした。


最後に;
Canto Ambrosiano In Nativitate Domini
GAUDE ET LAETARE
GAUDE ET LAETARE

グレゴリオ聖歌とは違って、アンブロシオ聖歌の典礼聖歌は全然違った雰囲気ですね?
皆様は如何思われますか?
イタリアのミラノを中心として歌われていた地域のカトリック聖歌ですが、グレゴリオ聖歌に駆逐されてしまいました。

私のミサ典礼書(LIBER USUALIS MISSAE ET OFFCII)にも数曲のアンブロシオ聖歌のネウマ譜の楽譜が記載されています。


 如何でしたか?最近は「もう一つのグレゴリオ聖歌」と云う他のページを作り、Monk(修道者)の格好で現代のPopを歌っているグループを紹介させて頂いています。
彼らは本来のグレゴリオ聖歌を正確に歌えていますので、歌唱力はあると思っています。

気分転換にこちらのページもご覧下さい。
 

もう一つのグレゴリオ聖歌 




 まだ説明は続きますので、ご期待下さい。 




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